一昔前までは、「むし歯になったら銀歯にする」といったイメージが定着するほどに銀歯の詰め物・被せ物が主流でありました。しかし銀歯の性質上、詰めた後にも虫歯になってしまう、審美性が良くない、金属アレルギーの心配、といった課題が残るものでした。そこでおすすめするのが金属を一切使用しない、詰め物・被せ物を製作するメタルフリー治療です。メタルフリー治療とは、どのような治療法であるのか、詳しくご紹介してまいります。
メタルフリー治療とは?
メタルフリー治療とはその名のとおり、金属を一切使用しない治療です。これまで銀歯は安価でありながらも耐久性も備わっているため、長年活用されてきましたが、海外では法律で禁止される国があるほど銀歯を使用することはほとんどありません。そのため、近年では日本でも金属を一切使用しない、メタルフリー治療が注目されています。
これまでのむし歯治療に欠かせなかった銀歯とは?
銀色の詰め物・被せ物であるため「銀歯」と呼ばれていますが、銀歯に使用されている材料は「歯科鋳造用金銀パラジウム合金」でできています。
銀だけではなく、さまざまな金属が合わさってできている合金であり、銀50%のほかにも金12%、パラジウム20%、銅20%が含まれています。
これまで日本では、保険診療の詰め物・被せ物として、銀歯が多く活用されてきました。
むし歯と銀歯の保有率
銀歯の保有率は30代から上昇傾向にあるといわれています。これは、厚生労働省が実施した「令和4年度歯科疾患実態調査」の「う歯を持つ者の割合の年次推移」でもわかるように、むし歯保有率は35歳~44歳では95.5%、次いで45~54歳では99%のむし歯保有率となり、銀歯を含む詰め物・被せ物の需要性がうかがえます。
銀歯が人体に及ぼす影響
銀歯は、銀、スズ、銅、水銀などの金属の合金で、歯の修復に広く使われてきました。しかし、人体に及ぼす影響については、いくつかの懸念があります。
・神経系への影響
長期間にわたって水銀が蓄積すると、神経系に悪影響を及ぼす可能性があります。特に記憶障害や集中力の低下、感情の不安定などが報告されています。
・腎臓への影響
水銀は腎臓に蓄積しやすく、腎機能に悪影響を与える可能性があります。
・アレルギー反応
金属イオンが体内に蓄積していくことで金属アレルギーを発症する恐れがあります。また、既に金属アレルギーであった場合は、お口の中が痒くなったり、赤くただれたりと、アレルギー症状が出てきてしまう可能性があります。
・電気的影響
アマルガムと他の金属が口腔内に存在すると、微小電流が発生し、電位差によるガルバニー電流(電流流れ)が起こることがあります。これが原因で、口の中で金属の味を感じたり、電流感を感じることがあります。
・審美的・心理的影響
銀歯は、見た目が自然な歯とは異なり、審美的に好まれない場合があります。特に前歯に銀歯があると、笑ったときに目立つことがあり、心理的な影響を受けることがあります。
・歯の構造への影響
銀歯は歯と直接結合しないため、治療の際に健全な歯質も多く削る必要があります。また、金属が温度変化によって膨張・収縮するため、歯にひびが入るリスクもあります。銀歯は経年劣化とともに細かな傷がついたり、欠けたりする恐れもあり、歯と銀歯の間に”すき間”が生まれてしまいます。そのため、そのわずかなすき間から「むし歯菌」が侵入し、気付かないうちに銀歯の下でむし歯となっていることも少なくありません。
・環境への影響
銀歯に含まれる水銀は、除去後に廃棄される際に環境汚染の原因となる可能性があります。そのため、近年では環境保護の観点からもアマルガムの使用が減少しています。
・歯肉辺縁に色素が沈着する
経年劣化にともない銀歯の金属イオンが溶けだしていくと、銀歯と歯肉の境目である歯肉辺縁が黒ずんでしまうこともあります。この現象はメタルタトゥーとも呼ばれ、歯磨きなどでは落としきれなくなってしまいます。
銀歯は長い間安全に使用されてきた一方で、水銀の影響や審美性の問題などから、現在ではセラミックやコンポジットレジンなどのメタルフリー素材が好まれる傾向にあります。健康リスクを最小限に抑えるためにも、銀歯の交換を検討する人も増えています。
メタルフリーの詰め物・被せ物
メタルフリーの詰め物・被せ物の場合は、保険診療ではなく全額自己負担となることがほとんどです。これまでお話ししたような、銀歯による影響を回避したいとお考えの場合は、以下のような詰め物・被せ物がおすすめです。
審美性オールセラミックの最大の特徴は、自然な歯の色や透明感を再現できることです。セラミックは光を透過する性質があるため、本物の歯のような質感と見た目を持っています。 特に前歯など、見た目が重要な部分での治療に適しています。
金属アレルギーがない
金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配がありません。これにより、アレルギー反応を避けることができ、口腔内の健康維持にも寄与します。
生体親和性が高い
セラミックは人体に対して非常に生体親和性が高く、歯茎との適合性も良いです。これにより、歯茎の黒ずみや炎症のリスクが少なくなります。
長期的な安定性
セラミックは強度が高く、長期間にわたって安定した機能を保つことができます。また、色が変わりにくく、長期間にわたって美しい状態を保つことが可能です。
接着力の強さ
オールセラミックは、接着材を使用して歯にしっかりと結合させることができます。これにより、治療後に外れるリスクが少なく、安定した治療結果が得られます。
種類について
・オールセラミック
オールセラミックは白い陶器の素材でできています。天然歯のような透明感のある歯の白さを再現できる詰め物・被せ物です。変色しにくく、汚れが付きにくいのが特徴で、前歯の被せ物にも多く使用されています。金属アレルギーの心配はありません。ジルコニアセラミックと比べると強度がやや劣ります。
・ジルコニアセラミック
人工ダイヤモンドといわれるほどに強度があり、奥歯の詰め物・被せ物にも採用されることが多くあります。ジルコニアは、インプラント体としても活用されるほどに親和性の高い素材です。
・ハイブリットセラミック
セラミックとレジン(歯科用プラスチック)を合わせた素材でできているので、強度がありながらもしなやかさもあり、周囲の歯を傷めにくい特徴があります。レジンが含まれているので、オールセラミックに比べると透明感がやや劣ります。
・ファイバーコア
被せ物の土台の役割を担うコアは、保険診療では金属になります。しかし、ファイバーコアは金属を一切使用していないため、金属アレルギーの心配がなく、被せ物の審美性に影響を与えません。また、メタルコアに比べると歯根に負担がかかりにくいのも特徴です。
・ラミネートベニア
歯の表面を薄く削り、つけ爪のような感覚で歯の表面にセラミックの板を張り付けていきます。前歯と前歯のすき間を埋めたり(正中理解)、ホワイトニングでは白くできない前歯に適用されたりします。
まとめ
今回はメタルフリー治療について、詳しくご紹介してまいりました。今ある銀歯を白くしたいとお考えの方や、金属アレルギーの心配を回避したい方におすすめですので、お気軽にお問い合わせください。