1.はじめに

小児矯正とは、子どもの成長段階に合わせて行われる歯並びの矯正治療のことです。早期に開始することによって、不正咬合や歯並びの問題を効果的に解決し、将来の口腔健康を守ることができます。正しい歯並びは、咀嚼機能の改善や発音の明瞭さだけでなく、自信のある笑顔へとつながります。また、早期治療は、治療期間の短縮や治療費用の削減にも関係するため、子どもの健康な成長をサポートする上で非常に重要です。 この記事では、小児矯正の適切な開始時期や治療法について、詳しく解説していきます。

2.小児矯正の適切な開始時期

小児矯正治療の最適な開始時期は、場合によっても変わりますが5歳頃からとされています。この時期に矯正治療を開始する理由は、顎の骨がまだ成長中であり、不正咬合や歯並びの問題を効率的に、そして効果的に修正できる可能性が高いためです。また、この時期以降から永久歯が生え始めるため、早期に問題を特定し、適切な治療計画を立てることが可能になります。

成長段階に応じた治療計画の重要性は、お口の健康と発達において極めて重要です。早期に介入することで、顎の成長を促進または誘導し、将来的に複雑な矯正治療が必要となるリスクを低減できます。さらに、早期治療は子どもの自尊心や社会性の発達にも肯定的な影響を与えることが期待されます。

しかしながら、すべての子どもがこの年齢で治療を開始する必要があるわけではありません。個々の子どもの口腔の健康状態や成長のペースによって、治療の開始時期は異なります。そのため、専門の歯科医師による早期診断が重要となり、適切な時期に治療を開始できるようになります。

3.年齢別の治療法とその特徴

小児矯正の適切な開始時期は子どもの個々の成長や歯の発育状況によって異なりますが、一般的なガイドラインとして以下の時期が推奨されています。

第一期治療(早期治療)

適切な開始時期:5歳から10歳頃

目的:顎の成長を誘導し、重大な歯並びの問題を予防。

適応症状:

  ・顎の成長不均衡

  ・交叉咬合(クロスバイト)や開咬(オープンバイト)などの咬み合わせの問題

  ・歯のスペース不足

  ・指しゃぶりや舌の押し出し癖などの口腔習慣の改善が必要な場合

治療内容:取り外し可能な装置や部分的な固定装置を使用する。

第二期治療(本格治療)

適切な開始時期:11歳から13歳頃

目的:永久歯が生え揃った後に、歯並びや咬み合わせを本格的に矯正。

適応症状:永久歯の歯並びや咬み合わせの問題。

治療内容:固定式の矯正装置(ブラケットやワイヤー)を使用。

具体的な開始時期の見極め

1.初期評価:歯科医による定期的なチェックを受けることが重要です。特に6歳から7歳頃に初めての矯正相談を受けることが推奨されます。 2.個別の成長ペース:子どもによって歯や顎の成長速度が異なるため、適切な治療開始時期は個別に判断されます。

4.早期治療の利点と遅延した場合の影響

早期矯正のメリット

顎の成長を適切に誘導し、将来的な矯正の必要性を減少させる可能性があります。成長期に治療を行うことで、骨の成長を利用した効果的な治療が可能です。早期に問題を解決することで、心理的なストレスを軽減します。

早期矯正が必要かどうかを判断するために、歯科医師との相談が重要です。定期的な歯科検診を受け、子どもの成長に合わせた最適な治療計画を立てることが大切です。

早期治療による最大の利点は、子どもの成長過程を利用して、顎と歯の問題をより効率的かつ効果的に解決できる点にあります。成長段階での調整は、顎の骨がまだ発展しているため、不正咬合や歯並びの問題を修正するために必要な圧力をより少なくすることができます。これにより、治療期間が短縮され、全体的な治療プロセスがよりスムーズに進行します。また、早期に介入することで、将来的により複雑で費用のかかる治療を必要とするリスクを減らすことができます。

また小児矯正を遅く始めると、以下のような影響や問題が生じる可能性があります。

1. 顎の成長が完了している:

成長期に矯正を行うと、顎の骨の成長を利用して効率的に治療が進みますが、成長が完了した後では骨の変化が難しくなります。大人になってからの矯正は、歯の移動が遅くなることがあります。

2. 歯列不正が進行する:

早期に治療を行わないと、歯列不正が進行し、問題が複雑化します。

 咬み合わせの問題が悪化し、治療が難しくなることがあります。

3. 口腔の健康への影響:

歯並びが悪いと歯磨きがしにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。咬み合わせの問題が咀嚼機能に影響し、消化不良や顎関節症のリスクを増大させることがあります。

4. 心理的な影響:

歯並びが悪いことで、子どもが自信を持てなくなったり、自己イメージが悪化することがあります。社会的なプレッシャーやいじめの原因になることもあります。

しかしながら 遅く始めた場合の対策

1. 包括的な治療計画:

遅く始めた場合でも、包括的な治療計画を立てることで効果的な治療が可能です。成人矯正の専門医と相談し、最適な治療法を選択します。

2. 補助的な治療:

骨を再生させるための外科的な治療(顎の拡大手術など)を併用することがある。矯正治療の進行を助けるためのインプラントやアンカーなどの補助的な装置を使用することもあります。

3. 長期間の治療:

治療期間が長くなることが予想されるため、長期的な計画と定期的なメンテナンスが重要です。

このことから矯正治療は早期に始めることで多くのメリットが得られますが、遅く始めても適切な対策を講じることで効果的な治療が可能です。成長期を過ぎても矯正治療を考えている場合は、矯正専門医とよく相談し、最適な治療計画を立てることが重要です。

5.小児矯正をする親の役割

小児矯正を成功させるためには、親のサポートが不可欠です。以下は、小児矯正を行う際の親の具体的な役割です。

まずは 初期段階でのサポートです。6歳から7歳頃に歯科医や矯正専門医の診察を受けさせることで、適切な治療開始時期を見極めます。

また、矯正治療に関する情報を収集し、どの治療法が子どもに最適かを理解します。

矯正治療中のサポートでは、定期的な矯正医の診察に欠かさず連れて行きます。診察や調整は数週間ごとに必要です。

また、子どもが装置を適切に使えるようにサポートします。取り外し可能な装置の場合、毎日装着することを忘れないように促します。

そして、矯正装置を装着している間は歯磨きが難しくなるため、適切な歯磨き方法を教え、フロスやマウスウォッシュの使用を促します。

心理的なサポートでは、 矯正治療は長期間にわたるため、子どもが治療に対して前向きに取り組めるように励まし、サポートします。

見た目の変化に対する不安や、装置による不快感を和らげるため、ポジティブな言葉をかけ、自信を持たせます。

日常生活では、矯正中に避けるべき食べ物(硬いもの、粘着性のあるもの)を理解し、子どもの食事を適切に管理します。スポーツを行う際にマウスガードの使用を促すなど、安全に活動できるように配慮します。

矯正治療が終わった後も、リテーナー(保定装置)をしっかりと使用するようにサポートし、後戻りを防ぎます。矯正が完了した後も、定期的な歯科チェックアップを続けることで、口腔の健康を維持します。

親の積極的な関与とサポートは、子どもの矯正治療の成功に大きく寄与します。親が子どもの矯正治療に積極的に参加し、適切なケアを提供することで、治療がスムーズに進み、良好な結果を得ることができます。

6.まとめ

いかがでしたか?小児矯正は、幼児期から青年期にかけて可能であり、早期に開始することで治療の効率と効果が高まります。適切な時期に治療を行うことは、健康な歯並びと口腔の健康を確保する上で、極めて重要です。早期に始めることによって多くのメリットがあり、親の積極的なサポートと関与が治療の成功に大きく寄与します。お子様の矯正治療でお悩みのことがありましたら、ぜひ当院へご相談ください。